第 12 章 単純グラフ

単純グラフ (simple graph) は対称的 (相互的) な関係をモデル化する。例えば「結婚している」「同じ言語を話す」「同じ言語を話さない」「同じ時刻に開催される」「導線で接続されている」といった相互的な関係を単純グラフはモデル化できる。単純グラフはスケジューリング、制約充足、コンピューターグラフィックス、通信などの様々な分野で利用されるものの、本書では読者の興味を引くこと間違いなしの応用を使って解説する: 人間の性的行動に関する疑問をプロフェッショナルに解決する。具体的には、平均して多くの異性パートナーを持つのは男性と女性のどちらかをいくつかのデータを見ながら考える。

人間の性的関係を統計的に調べた研究は数多く存在する。シカゴ大学の研究グループが 2500 人のランダムサンプルに対して数年にわたってインタビューした結果をまとめた 1994 年公開の論文 The Social Organization of Sexuality (性の社会的組織性) は、平均して男性は女性より 74 % 多い異性パートナーを持つと報告している。

他の研究では男女の差がさらに大きい。例えば ABC News は、一生のうちに持つ性的パートナーの人数が男性は 20 人であるのに対して、女性は 6 人だと主張した。男女の差は 233% にも及ぶ。この ABC News による研究は 2004 年の Primetime Live で放送されたもので、2.5% 以下の誤差しか持たない最も科学的な研究の一つだと自らを称している。ただし、その題名は American Sex Survey: A peek between the sheets (アメリカ人のセックス調査: シーツの間から見えたもの) である ── 研究の真剣さに疑問を呈さずにはいられない。

さらに 2007 年 8 月には、生涯の性的パートナーの人数が男性は 7 人であり、女性は 4 人であるというアメリカの国立衛生統計センターによる研究を New York Times が紹介した。最も正確な数字を得たのは誰だろうか? シカゴ大学か、ABC ニュースか、それとも国立衛生統計センターか?

答える必要はない ── この質問はひっかけ問題である。初歩的なグラフ理論を使うと、どの数字も真実から大きく離れていることが分かる。

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