図形を移動するとき、その面積は変化しない。
練習問題
問題 1.1
ピタゴラスの定理 (Pythagorean Theorem) は、直角三角形の直角をなす二辺の長さをそれぞれ \(a\), \(b\)、斜辺の長さを \(c\) とするとき、次の等式が成り立つと主張する:
この定理は非常に基礎的で誰でも知っているので、多くの人は当たり前の知識とみなしている。しかし、誰もが知っている事実によって定理が「明らか」になることはない ── 実際、人々は数千年にわたってピタゴラスの定理の異なる証明を考案する必要性を感じてきた1。この問題では、とある非常に単純な「言葉のいらない証明」に注目する。
その証明は次の通りである。図 \(\text{1.1}\) のように、三辺の長さが \(a\), \(b\), \(c\) である直角三角形が四つ、そして特定の長さの正方形が一つあるとする。
その上で、次の事実を確認する:
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まず、四つの直角三角形と一つの正方形を組み合わせて \(c \times c\) の正方形を作る。ここから、黄色い正方形の一辺の長さが \(b-a\) だと分かる。
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続いて、同様に四つの直角三角形と一つの正方形を組み合わせて \(a \times a\) の正方形と \(b \times b\) の正方形が横並びになった図形を作る。
\(s \times s\) の正方形の面積は \(s^{2}\) だから、次の原理を利用すれば \(a^{2} + b^{2} = c^{2}\) を得る:
これは説得力のある美しい証明であるものの、数学的に悩ましい部分がいくつかある。例えば、上述の操作を可能にする直角三角形または正方形の特徴が存在するかもしれない ── \(a = b\) のとき本当に操作が可能だろうか?
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この疑問について、あなたはどう答えるか?
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もう一つ悩ましい点として、この証明が図形の組み合わせる操作を正当化する上で直角三角形・正方形・直線に関する様々な事実を暗黙に仮定していることがある。仮定されている事実をいくつか指摘せよ。
問題 1.2
何が起きているんだ?
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この誤った証明に含まれる誤りを正確に指摘し、説明せよ。
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\(1 = -1\) なら \(2 = 1\) だと (正しく) 証明せよ。
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任意の正の実数は二つの平方根を持つ。一つは正で、もう一つは負である。\(\sqrt{r}\) は \(r\) の正の平方根を表すことが標準的な慣習になっている。実数の乗算に関する基本的な性質を仮定して、正の実数 \(r\), \(s\) に関する次の等式を証明せよ:
\[ \sqrt{rs} = \sqrt{r} \sqrt{s} \tag{1.7}\]
問題 1.3
次に示す誤った証明2に含まれる誤りを正確に指摘せよ:
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誤った主張 \(1/8 > 1/4\)
誤った証明
\[ \begin{aligned} 3 &> 2 \\ 3 \log_{10}(1/2) &> 2 \log_{10} (1/2) \\ \log_{10}(1/2)^{3} &> \log_{10} (1/2)^{2} \\ (1/2)^{3} &> (1/2)^{2} \end{aligned} \]後は分数の乗算規則から \(1/8 > 1/2\) を得る。 ■
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誤った証明 \(1 ¢ = \$ 0.01 = (\$ 0.1)^{2} = (10 ¢)^{2} = 100 ¢ = \$ 1\) ■
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誤った主張 \(a\) と \(b\) が等しい実数のとき \(a = 0\) である。
誤った証明
\[ \begin{aligned} a &= b \\ a^{2} &= ab \\ a^{2} - b^{2} &= ab - b^{2} \\ (a - b) (a + b) &= (a - b)b \\ a + b &= b \\ a &= 0 \end{aligned} \]■
問題 1.4
「算術平均は幾何平均より小さくならない」という事実がある。言い換えれば、非負実数 \(a\), \(b\) に対して次の不等式が成り立つ:
この事実の次に示す証明には、数学的に問題がある箇所がある。それを指摘し、修正せよ:
誤った証明
\(a - b\) は実数であり、実数の二乗は負にならないので、最後の不等式は正しい。よって示したい不等式は証明された。 ■
問題 1.5
Albert 教官は「来週どこかで抜き打ちテストをする」と宣言した。
生徒たちは Albert が金曜日に抜き打ちテストをするかどうかを考え、それは不可能だと結論付けた: もし金曜日より前 (木曜日の 24 時より前) にテストがなかったら、テストは金曜日に実施されると分かってしまうので抜き打ちテストにならない。
続いて、生徒たちは抜き打ちテストが木曜日にあるかどうかを考え、次の事実に気が付いた: テストは金曜日に実施されないので、もし木曜日より前にテストがなかったら、テストが木曜日に実施されると分かる。このときテストは抜き打ちにならないから、木曜日にもテストは実施されない。同様に水曜日・火曜日・月曜日にもテストは実施できず、つまり Albert は抜き打ちテストをできないと結論付けた。このことを聞いた他のクラスメイトは安心して、Albert はウソをついたのだろうと思うようになった。そしてテストを誰も予想していなかった事実そのものが、次の週の木曜日に Albert が実施したテストが抜き打ちとなった理由だった!
生徒たちの考えの間違いは (もしあるなら) 何だろうか?
問題 1.6
\(n\) が正整数のとき、\(\log_{7} n\) は整数または無理数だと示せ。整数と素数に関するよく知られた事実を使っても構わないが、使う事実をはっきりと表明すること。
問題 1.7
場合分けを使って、任意の実数 \(r\), \(s\) に対する次の等式を示せ:
問題 1.8
無理数の無理数乗が有理数になることはあるだろうか?
場合分けによる議論で \(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\) を考えることで、無理数の無理数乗が有理数になることがあると示せ。
問題 1.10
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非負整数 \(a\), \(b\), \(c\), \(d\) が次の等式を満たすと仮定する:
\[ a + b + c = d \]\(P\) を命題「\(d\) が偶数」、\(W\) を命題「\(a\), \(b\), \(c\) の中でちょうど一つだけが偶数」、\(T\) を命題「\(a\), \(b\), \(c\) が全て偶数」とする。
場合分けを使って、次の命題を示せ:
\[ P \ \operatorname{\text{\footnotesize IFF}}\ [W \ \operatorname{\text{\footnotesize OR}}\ T] \] -
次は非負整数 \(w\), \(x\), \(y\), \(z\) が次の等式を満たすと仮定する:
\[ w^{2} + x^{2} + y^{2} = z^{2} \]\(P\) を命題「\(z\) は偶数」、\(R\) を命題「\(w\), \(x\), \(y\) が全て偶数」とする。場合分けを使って、次の命題を示せ:
\[ P \ \operatorname{\text{\footnotesize IFF}}\ R \]ヒント: 奇数は整数 \(m\) を使って \(2m + 1\) と表現でき、その二乗は \(4(m^{2} + m) + 1\) に等しい。
問題 1.11
\(a^{\sqrt{3}}\) が有理数であるような無理数 \(a\) が存在することを示せ。
ヒント: \(\sqrt[3]{2}^{\sqrt{3}}\) に注目して、場合分けを使う。
問題 1.12
任意の正整数 \(n\) に対して、もし \(a^{n}\) が偶数なら \(a\) も偶数だと示せ。
ヒント: 背理法を使う。
問題 1.13
\(a\), \(b\), \(n\) を非負の実数とする。背理法を使って、もし \(ab = n\) なら \(a\) または \(b\) が \(\sqrt{n}\) 以下だと示せ。
ヒント: 第 1.8 節の例を参考にする。
問題 1.14
\(n\) を非負の整数とする。
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\(n^{2}\) が偶数 ── つまり \(2\) の倍数 ── のとき \(n\) も偶数である理由を説明せよ。
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\(n^{2}\) が \(3\) の倍数のとき \(n\) も \(3\) の倍数である理由を説明せよ。
問題 1.15
「\(n^{2}\) は \(m\) の倍数であり、\(n\) は \(m\) の倍数でない」を満たす異なる正整数 \(m\), \(n\) の例を示せ。「\(m\) は \(n\) より小さい」という条件を加えた場合はどうか?
問題 1.17
\(\log_{4} 6\) が無理数だと示せ。
問題 1.18
\(\sqrt{3} + \sqrt{2}\) が無理数だと背理法を使って示せ。
ヒント: \((\sqrt{3} + \sqrt{2})(\sqrt{3} - \sqrt{2})\)
問題 1.19
問題 1.16 の一般化を示す。初めて目にする読者もいるかもしれない。
整数係数多項式
の任意の実根は整数または無理数である。
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この補題から「\(k\) が \(m\) の冪でないとき \(\sqrt[m]{k}\) は無理数である」が直ちに従う理由を説明せよ。
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補題を注意深く証明せよ。
ヒント: 次の事実が利用できるだろう:
整数 \(n\) の冪が素数 \(p\) を素因数に持つとき、\(p\) は \(n\) の素因数でもある。
この事実は証明なしに使って構わないが、正しい理由を考えてみるとよい。
問題 1.20
\(\log_{9} 12\) が無理数だと示せ。
問題 1.21
\(\log_{12} 18\) が無理数だと示せ。
問題 1.22
\(\sqrt[3]{\mathstrut\smash{7^{2}}}\) が無理数だと示す典型的な証明では、\(a\), \(b\) が正整数のとき次の等式の一つが解を持たない事実が利用される (解を持たない等式は複数存在するものの、証明で利用されるのは一つである)。証明で利用される等式はどれかを指摘し、その等式が解を持たない理由を説明せよ。\(\sqrt[3]{\mathstrut\smash{7^{2}}}\) が無理数である事実を利用してはいけない。
- \(a^{2} = 7^{2} + b^{2}\)
- \(a^{3} = 7^{2} + b^{3}\)
- \(a^{2} = 7^{2}b^{2}\)
- \(a^{3} = 7^{2}b^{3}\)
- \(a^{3} = 7^{3}b^{3}\)
- \((ab)^{3} = 7^{2}\)
問題 1.23
問題 1.8 では、無理数 \(a\), \(b\) であって \(a^{b}\) が有理数であるものが存在すると示した。しかし残念ながら、その証明は非構成的 (nonconstructive) だった: 条件を満たす \(a\), \(b\) が実際に見つかったわけではない。ただ、条件「\(a^{b}\) が有理数」を満たす無理数 \(a\), \(b\) は簡単に見つかる:
\(a = \sqrt{2}\) が無理数であることは分かっており、\(a^{b} = 3\) は定義から分かる。\(2 \log_{2} 3\) が無理数と示すことで、この \(a\), \(b\) が条件を満たす事実の証明を完了させよ。
問題 1.24
\(\sqrt{2}\) の無理数性の別証明を示す。これは American Mathematical Monthly, v.116, #1, Jan. 2009, p.69 に掲載された。
証明 背理法で示す。\(\sqrt{2}\) が有理数だと仮定し、\((\sqrt{2} - 1)q\) が非負整数となる最小の整数 \(q > 0\) を取る。\(q^{\prime} ::= (\sqrt{2} - 1)q\) と定義すると、明らかに \(0 < q^{\prime} < q\) である。しかし簡単な計算から \((\sqrt{2} - 1)q^{\prime}\) が非負整数だと分かり、\(q\) の最小性と矛盾する。 ■
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この証明は大学講師向けに書かれているので、今の私たちにとっては少し簡潔すぎる。各ステップに説明を加えた完全なバージョンの証明を示せ。
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証明の各ステップを理解した上で、この証明と以前に示した証明のどちらがあなたの好みだろうか? その理由は? グループで何分か話し合い、グループの回答を黒板にまとめよ。
問題 1.25
第 1.1 節で見たように、\(n=40\) のとき多項式 \(p(n) ::= n^{2} + n + 41\) の値は素数でない。しかし、この事実は予想できる: 一般に、定数でない整数係数多項式が素数だけを生成することはない。この事実を示そう。
\(q(n)\) を整数係数多項式、\(c ::= q(0)\) を \(q\) の定数項とする。
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任意の \(m \in \mathbb{Z}\) に対して、\(q(cm)\) が \(c\) の倍数だと示せ。
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\(q\) が定数でない多項式で \(c > 1\) とする。\(n\) が非負整数の値を取るとき、\(q(n) \in \mathbb{Z}\) は素数でない値を無限に多く生成すると示せ。
ヒント: 「定数でない整数多項式の絶対値は \(n\) が大きくなるにつれて無限に大きくなる」というよく知られた事実を仮定してよい。
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任意の定数でない多項式 \(q\) に対して、ある \(n \in \mathbb{N}\) で \(q(n)\) が素数でないと結論付けよ。
ヒント: 簡単な場合が一つだけ残っている。
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http://www.cut-the-knot.org/pythagoras/ には \(100\) 種類以上の異なる証明が掲載されている。 ↩︎
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Michael Stueben, Diane Sandford 著 Twenty Years Before the Blackboard [48] より。 ↩︎
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実数 \(r\) の絶対値 (absolute value) \(|r|\) は \(r\) と \(-r\) の負でない方に等しい。 ↩︎