18.7 事象の独立
18.7.1 定義
公平なコインを計二回、それぞれ十分離れた場所で一度ずつ投げたとする。このとき当然、一回目のコイン投げの結果は二回目のコイン投げの結果に影響しない。この事実は独立 (independence) の概念で表現される:
\(A\), \(B\) を事象とする。\(\operatorname{Pr}[B] \neq 0\) なら、次の関係が成り立つとき事象 \(A\) は事象 \(B\) と独立 (independent) と言う:
確率 \(0\) の事象は (自身を含む) 全ての事象と独立と定義される。
言い換えれば、\(B\) が起きたという情報を知ったとしても \(A\) が起きる確率が全く変化しないとき、\(A\) は \(B\) と独立となる。先ほどの例で言えば、一回目のコイン投げの結果からなる事象は二回目のコイン投げの結果からなる事象と独立である。
独立性を異なる形で表すと扱いやすい場合がある。次の定理は定義 18.7.1 から直ちに得られる:
\(A\), \(B\) を事象とする。次の関係が成り立つ:
定理 18.7.2 で \(A\) と \(B\) が対称な事実に注目すれば、次の系が分かる:
落とし穴
事象の排反と独立が同じだと考えてしまう学生がたまにいる。これは正しくないばかりか、逆が正しい: もし \(A \cap B = \varnothing\) なら、\(A\) が起こったと分かれば \(B\) が起こらなかったと分かる。つまり排反な二事象は決して独立にならない ── 唯一の例外は一方の確率が \(0\) のときである。
条件付き独立
独立でない二つの事象であっても、何らかの事象に関する条件付き確率を考えると関係 \(\text{(18.5)}\) の右辺と同様の等式が成り立つ場合がある。そういった関係を表す表現がある:
\(A\), \(B\), \(E\) を事象とする。次の等式が成り立つとき、\(A\) と \(B\) は \(E\) の下で条件付き独立 (conditionally independent given \(E\)) と言う:
18.7.2 独立性は仮定である
一般に、独立性はモデルの作成者によって仮定される。例えば、コインを \(2\) 回投げる試行を考えよう。\(A\) を事象 [一回目のコイン投げの結果が表] として、\(B\) を事象 [二回目のコイン投げの結果が表] とする。\(A\) と \(B\) が独立と仮定するなら、両方のコインが表を向く確率は次のように計算できる:
この例では独立性の仮定に疑いの余地はない。一回目のコイン投げの結果が二回目のコイン投げの結果に影響を及ぼすとは誰も考えない。また、もし試行を何度も繰り返したら、その約 \(1/4\) で \(A \cap B\) が起きる可能性が高い。
一方で、独立性を仮定することが正当化されない事象の例も多くある。例えば、天気予報が「\(1\) 時間ごとの降水確率は一日を通して \(10\%\) です」と伝えたとき、それは雨が一日を通して降らない確率が \((1 - 0.1)^{24} \approx 0.08\) であることを意味しない。実際には、もし午後五時に雨が降らなかったら、午後六時にも雨が降らない確率は \(90\%\) より高くなるだろう。また、もし午後五時に土砂降りの雨が降ったなら、午後六時に雨が降る確率は \(10\%\) よりずっと高いに違いない。
事象の独立性を仮定すべきかどうかを判断するのは難しい。独立な事象に対してだけ成り立つ有用な公式 ── 例えば等式 \(\text{(18.5)}\) ── が数多く存在するので、実際の問題を解く上では独立性を仮定した方が都合がいい。しかし、軽々しく仮定すべきではない: 独立性を誤って仮定したために起きる問題の有名な例をこれからいくつか見る。三つ以上の事象が関係するとき、問題はさらに厄介になる。