18.1 Monty Hall 問題に関する混乱
第 17.1 節では Monty Hall 問題が職業数学者さえ惑わしたと説明した。樹形図を使えば機械的かつ論理的に解法を得られることを知っていると、この事実は奇妙に思える。どうして多くの人が Monty Hall 問題を正しく解けなかったのだろうか?
誤った議論の一つを次に示す: プレイヤーがドア \(A\) を選び、その後 Carol (Monty の助手) がドア \(B\) を開けてヤギを見せたとする。前章で示した樹形図 (図 \(\text{17.3}\)) を確認すると、プレイヤーがドア \(A\) を選び、ヤギがドア \(B\) の後ろにいる結果は次の \(3\) 個しか存在しない:
これらの結果はそれぞれ \(1/18\), \(1/18\), \(1/9\) の確率を持つ。
これらの結果の中でプレイヤーがドアの選択を変更したとき車を獲得できるのは最後の結果 \((C, A, B)\) のみである。この結果の確率は \(1/9\) で、他の \(2\) 個の結果の確率を足した \(1/9\) と等しい。つまり、この状況ではドアの選択を変更しても変更しなくても車を獲得できる確率は変わらない。言い換えれば、ドアの選択の変更に意味はない!
車を獲得できる本当の確率は \(2/3\) なので、何かが間違っている。この誤った議論が見過ごしているのは、特定の時点までに起こったことに関する情報があると確率が変化するという事実である。この議論が計算したのは、事象 [ドア \(A\) を選択 \(\operatorname{\text{\footnotesize AND}}\) ドア \(B\) にヤギ] が起こったという条件の下での事象 [ドアを変更して車を獲得] の確率でしかない。この値は次のように表記される:
この値は確かに \(1/2\) に等しい。
18.1.1 カーテンの裏側
確率に関連付けられる「条件 (condition, 前提)」は、考えに入れる結果を制限するように指示する。数学的に言えば、これは一部の結果からなる新しい標本空間を定義することに等しい。上記の例では、「プレイヤーがドア \(A\) を選択し、ヤギがドア \(B\) に隠されている」が条件であり、新しい標本空間は式 \(\text{(18.1)}\) に示した \(3\) 個の結果だけからなる。そして、この新しい標本空間に属する結果の確率の和 \(1/18 + 1/18 + 1/9\) の中で結果 \((C, A, B)\) だけからなる事象の確率 \(1/9\) が占める割合が計算された:
この式変形に間違いはない。では、ドアを変更すべきかどうかに関して誤った結論が得られたのはどうしてだろうか? 簡単に言えば、計算している値がそもそも間違っているからである。次節で詳しく説明する。