1.3 公理的方法
数学における真理を立証する標準的な手続きは、紀元前 300 年ごろエジプトのアレクサンドリアで活躍した数学者 Euclid によって発明された。彼のアイデアは「異なる二つの点の間には直線が引ける」といった経験から否定できないと考えられる幾何学に関する五つの仮定 (assumption) から議論を始める、というものだった。こういった最初から真とみなされる命題を公理 (axiom) と呼ぶ。
五つの公理を元に、Euclid は「証明」を与えることで様々な命題が真理だと示した。証明 (proof) とは、公理または以前に証明された命題から始まって真理だと示そうとしている命題で終わる論理的演繹の連なりを言う。読者は高校の幾何学の授業で多くの証明を書いたことだろう。本章でもたくさんの証明を見る。
証明された命題を指す用語がいくつかある。異なる用語を用いることで、命題が果たす役割に関する手がかりを読者に与えることができる:
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重要な命題を定理 (theorem) と呼ぶ。
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後の命題の証明で有用となる補助的命題を補題 (lemma) と呼ぶ。
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定理から数ステップですぐに示せる命題を系 (corollary) と呼ぶ。
これらの定義は厳密でない。定理の証明で利用した優れた補題が、その定理よりずっと重要だと後から判明するケースもある。
Euclid が用いた公理と証明によるアプローチは公理的方法 (axiomatic method) と呼ばれ、現在まで数学の基礎であり続けている。ZFC (Zermelo-Fraenkel set theory with axiom of choice) と呼ばれる少数の公理と論理的演繹規則があれば、数学の事実上全ての分野を導けるとされている。ZFC は第 8 章で詳しく見る。