1.6 論理的同値性の証明

数学的な定理の中には二つの条件が論理的に同値である ── 片方の条件が成り立つとき、かつそのときに限ってもう一方の条件が成り立つ ── ことを示すものが多くある。数千年前から知られている例を次に示す:

二つの三角形は二つの辺の長さとそれらの辺がなす角度が等しいとき、かつそのときに限って三辺の長さが等しい。

「if and only if ( \(\cdots\) のとき、かつそのときに限って \(\cdots\) )」というフレーズは非常によく使われるので、「iff」と省略されることも多い。

1.6.1 方法 1: 両方向の論理的含意を示す

命題「\(P \ \operatorname{\text{\footnotesize IFF}}\ Q\)」は命題「\(P \ \operatorname{\text{\footnotesize IMPLIES}}\ Q\) かつ \(Q \ \operatorname{\text{\footnotesize IMPLIES}}\ P\)」に等しい。よって二つの論理的含意を証明すれば論理的同値性が証明される:

  1. 「\(P\) ならば \(Q\) と \(Q\) ならば \(P\) をそれぞれ示す」と書く。

  2. 「まず \(P\) ならば \(Q\) を示す」と書き、第 1.5 節にある方法のいずれかを使って証明する。

  3. 「続いて \(Q\) ならば \(P\) を示す」と書き、同様に第 1.5 節にある方法のいずれかを使って証明する。

1.6.2 方法 2: 同値変形で示す

次の方法を使っても命題「\(Q\) が真のとき、かつそのときに限って \(P\) は真」を証明できる:

  1. 「同値変形で二つの命題が同値だと示す」と書く。

  2. \(P\) が別の命題と同値だと示し、その命題がさらに別の命題と同値だと示す。この手続きを \(Q\) に達するまで続ける。

一つ目の方法と比べると、この方法では賢い工夫が求められる傾向がある。しかし、得られる証明は短くて美しい場合が多い。

数列 \(x_{1}\), \(x_{2}\), \(\ldots\), \(x_{n}\) の標準偏差 (standard deviation) は次の式で定義される:

\[ \sqrt{\frac{(x_{1} - \mu)^{2} + (x_{2} - \mu)^{2} + \cdots + (x_{n} - \mu)^{2}}{n}} \tag{1.3}\]

ここで \(\mu\) は数列の平均 (average) を表す:

\[ \mu ::= \frac{x_{1} + x_{2} + \cdots + x_{n}}{n} \]
定理 1.6.1

数列 \(x_{1}, \ldots, x_{n}\) の各項が全て平均に等しいとき、かつそのときに限って数列の標準偏差は \(0\) になる。

例えばテストの点数を考えているなら、クラス全員がぴったり平均点を取ったとき、かつそのときに限って点数の標準偏差は \(0\) となる。

証明 同値変形で二つの命題が同値だと示す。標準偏差 \(\text{(1.3)}\) が \(0\) のとき、かつそのときに限って次の等式が成り立つ:

\[ \sqrt{\frac{(x_{1} - \mu)^{2} + (x_{2} - \mu)^{2} + \cdots + (x_{n} - \mu)^{2}}{n}} = 0 \tag{1.4}\]

\(\sqrt{x} = 0\) を満たす \(x\) は \(0\) のみなので、等式 \(\text{(1.4)}\) は次の等式と同値である:

\[ (x_{1} - \mu)^{2} + (x_{2} - \mu)^{2} + \cdots + (x_{n} - \mu)^{2} = 0 \tag{1.5}\]

実数の二乗は非負なので、等式 \(\text{(1.5)}\) の左辺にある各項も非負と分かる。よって、等式 \(\text{(1.5)}\) は次の命題と同値である:

等式 \(\text{(1.5)}\) の左辺の各項が \(0\) に等しい。

\((1.6)\)

\((x_{i} - \mu)^{2}\) が \(0\) になるのは \(x_{i} = \mu\) のとき、かつそのときに限る。よって命題 \(\text{(1.6)}\) は次の命題と同値だと結論できる:

全ての項 \(x_{i}\) が平均値 \(\mu\) に等しい。

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